医療法人 徳洲会 武蔵野徳洲会病院
楽しく食べる、を支えるために
~食の力で地域をつなぐ~

土屋輝幸さん
医療法人 徳洲会 武蔵野徳洲会病院
栄養管理室 管理栄養士
「地域でつながる」第6回目は「むさとく」の愛称で親しまれ、「地域のかかりつけ病院」として私たちの生活を支える武蔵野徳洲会病院です。全国でも数少ない「がん病態栄養専門管理栄養士」の資格を持つ管理栄養士・土屋輝幸さんに「食」を通じていのちに寄り添うその思いについて、お話しを伺いました。
病院の中で、一人ひとりに寄り添う
―土屋さんは病院内のオンコロジーセンターで化学療法を受けているがん患者さんのもとを定期的に訪れて食事の相談を行っているそうですね。
土屋:「お食事の様子どうですか?」と顔を見に行き、もし、食べられていないようならば、少し詳しくお話を伺い、背景に応じて「こういうふうにしたら食べやすくなるかもしれませんね」とお話をしたりしています。
―病院で提供される入院食にかかわる部分でも、日本栄養治療学会や日本病態栄養学会のコンテストで、土屋さんの献立がグランプリや最優秀賞を受賞されたとか。
土屋:「見た目にも美味しい病院食」がテーマだったこともあり、普段患者さんが召し上がっているメニューから厳選したものをちょっと調整したレシピがグランプリを取れた時はすごく光栄でした。病院の食事は基本的に蓋がされています。蓋を開けたときに感動させられるような食事を出したいな、と日ごろから思っていて、それは献立を構成しただけでは完結しません。調理師や盛り付けをするスタッフなどの協力が不可欠で、受賞は現場のチームが一丸となって取り組んだ結果です。

「食事はただの栄養補給の意味合いだけではなくて、もっといろんな要素がある」という思いから、誰かと一緒に食べる楽しみ、季節の味を味わう喜び、そして口から食べること――そうした“食事の楽しみ”を大切にしてほしいとも話してくださいました。
また武蔵野徳洲会病院では最初に主治医からの指示があれば、外来での栄養相談も受け付けており、患者さんの希望に応じて、無理のないペースで長く関わる支援を続けているそうです。
夏の食欲不振を吹き飛ばすスタミナ御膳
こども食堂で、地域の「食の交流」を育む
土屋さんは地域活動にも力を入れています。病院が主催する「むさとく こども食堂」は月1回の開催で、子どもと一緒であれば大人も参加できる開かれた場です。

「病院だからこそできる、栄養バランスのとれたごはん」を意識しているという「むさとく こども食堂」では、子供が苦手な納豆を使った納豆チャーハンや地元のトマト農園さんとコラボレートした“トマトすき焼き”など、お子さんの好き嫌いの悩み解消のヒントにもなるような新しい食べ方なども提案しています。また地域の生産者とも積極的につながり、自然と地域の輪が広がっています。
気負わず、楽しむ気持ちを
がんと告知された直後に、食べ物が原因でがんになったんじゃないかと思ってしまい、食べられなくなり、体重が落ちてしまう方もいます。最終的には“バランスよく食べて”と言われるのですが、実はその“バランスよく”がよくわからないという悩みについても伺いました。
土屋:“バランスのとれた食事”というのは、確かに便利な言葉なんですけど、具体的にどうしたらいいかわかりづらいですよね。ある程度基準に基づいて、こういう風な食べ方をしたほうがいいということもあるので、それはやっぱり的確にお伝えしたいですね。またインターネット上には誤った情報もありますから、相談会や座談会のような場で、正しい情報や知識を伝えられる機会があれば専門職としては嬉しいかなとも思います。
私たちも相談できる場所があると、とても心強いと感じました。最後に子育て世代のがんママたちにメッセージをいただきました。
土屋:人はやっぱり食べることで元気になるっていう部分もあると思うんです。誰かと一緒に食べるから美味しいとか。あれもこれも、何でもダメ、これ食べたら太るかしらとか、そういうことばかり気にするより、気追わず食事を楽しむっていう気持ちになっていただくことが本当に大事だと思います。
日々患者さんと接していても決して飽きることがないという土屋さん。「かかわる患者さんが増えれば増えるほど、僕らの引き出しも増えるので」という言葉からは、食事で生きる力を支えるという使命感のようなものが伝わってきました。
お問い合わせ
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